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ひとつのテーマで観客の寛容の境界線を探求する "鑑賞パーティの母"

ブライアン・ラウリー
2008/08/27

●原題:Sex and the City/2008年/アメリカ/144分/2008年8月23日(土)より日劇3ほか東宝洋画系にて日本公開
●配給:ギャガ・コミュニケーションズ

すてきな4人の再会を見ることができる喜びはあるものの、
埋めきれてはいないテレビと映画のギャップ

(C)MMVlll New Line Productions,Inc.Sex and the City TM is a trademark of Home Box Office,Inc.All Rights Reserved.
(C)MMVlll New Line Productions,Inc.Sex and the City TM is a trademark of Home Box Office,Inc.All Rights Reserved.
 テレビシリーズでは、あんなにロマンスに傾倒していたのに、待望の劇場版『セックス・アンド・ザ・シティ』は、ちょっと中途半端なものに感じられてしまう。HBOチャンネルが生んだすてきな4人の再会を見ることができる喜びはあるものの、脚本兼監督のマイケル・パトリック・キングは、テレビと映画のギャップを完全に埋め切れてはいない。物語の軸となる盛り上がりはうまく伝えることが出来ているが、そこかしこで通常のテレビ1話分を、いつもの5倍の長さに膨らましてしまったという雰囲気を払拭できていないのである。瞬間、瞬間には素晴らしい箇所もあるので、女性客たちは、この鑑賞パーティの母とも呼べる作品に集まるだろうけれど、そのコア層以外へのアピールとなると、ニューライン社が疑いもなく望んでいるようなハッピーエンドはやってこないかもしれない。

 テレビシリーズの後半でクリエイティブ面でのけん引役をつとめた監督キングは、オープニングクレジットのシーンをうまく使って、観客たちをすばやく『セックス・アンド・ザ・シティ』の世界へと導き入れている。テレビシリーズ最終話で、それぞれのハッピーエンディングを迎えようとしていた登場人物たちに、とても素早く観客たちを出会わせているという意味である。

 ただ、この映画がそのペースを保つことに同じような熱心さを持ってくれれば、よかったのだが……物語の多くを捨て去ることをしなかったため、ひとつのテーマで観客の寛容の境界線を探求しているような結果に終わってしまっている。ロマンティックコメディにとっては皮肉なことで、2時間半近くにも無理に引き伸ばすという、ほとんど救いようのない罪を犯してしまっている。

おとぎ話のようなエンディングは、永遠ではない、という
テレビシリーズの物悲しいトーンを受け継ぐ映画版

 あれから少し時間が経ち、映画はおとぎ話のようなエンディングが、必ずしも末永く幸せであることを意味していないというテレビシリーズの物悲しいトーンを受け継いでいる。グループの語り手であるキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)は、つきあったり別れたりを繰り返し、最後の最後にものにした大物ミスター・ビッグ(クリス・ノス)との関係だけをいまだに続けている。神経質なミランダ(シンシア・ニクソン)は結婚生活とスケジュール超過の母親業をやりくりし、シャーロット(クリスティン・デイヴィス)は、いつも目を丸くする夢見る乙女のまま。そしてサマンサ(キム・キャトラル)はハリウッド版のセックスメイト、ずっと若く、有無を言わさぬほどに魅力的なテレビスターのスミス(ジェイソン・ルイス)という恋人を手に入れたにもかかわらず、浮気をしないという考えにいらだっている。

 それぞれの女性が否応なしにそれぞれの問題に直面し、それぞれにハイライトをあてながら、パーカー演じるキャリーを中心として、彼女を取り巻く状況が物語を進めていく。しかし、そういった関係性も結局のところ、4人がシャンペンで酔っぱらったり、デイヴィス演じるシャーロットが友人のために感情的になって立ち上がったりといった単純なシーンほどに満足いくものを観客に与えてくれていない。

 新しい顔として、ジェニファー・ハドソンがキャリーの新しいアシスタントとして登場し、20代ならではの愛を信じる姿を披露している。『ドリームガールズ』のスターである彼女は、与えられた以上に、そのあまり脈略のない点描的な役を大仰に演じており(もちろん、当たり前のように劇中で1曲歌い上げているし)、ついでながら、このテレビシリーズの一方に大きく偏った年齢分布図に変化を加えるような役割を演じているわけでもない。

高級ブランドが盛りだくさん&男性を性的にものとして扱う点は、
女性にとって映画的な至高の瞬間を楽しむポイント

 驚くことではないのだが、想像できる限り全ての高級ブランドが、このファッションにとりつかれた『セックス・アンド・ザ・シティ』を飾り立てるために登場しているのも事実である。またさらに、いつもとは違う趣向で完全に男性を性的にものとして扱うというシーンがあるが、これが女性もまた映画的な至高の瞬間を楽しめるという滅多にないことを成立させてくれている。まったくサマンサのおかげである。(ここで、これまでまったく知られていなかったお薦め株として、ダンテという意味ありげな役名をつけられたサマンサの魅力的な、ほとんどセリフのない隣人を演じるジル・マリーニが出てくるのだが、彼は買いだろう。)どんなテレビ番組であっても、映画化するのは気が遠くなるような困難な仕事である。もちろん、HBOの芸術的な自由という恩恵を受けていた作品でさえも例外ではない。このテレビから映画への転換のプロセスには、舞台、立ち位置の変更を正当化しながらも、番組自体の本質をとらえるという繊細さが求められるのである。

 「昔のままなのね」と、4人が集まるいつもシーンのひとつで、サマンサはため息をつく。きっと本当にそう感じたに違いない。それはキングがキャストだけでなく、製作サイドにも昔と同じメンバーを揃えていたからであろう。

 ほんとうに昔のまま、なのだろうか。いや、実はそうだとばかりは言えない。それが証拠に、どんなにうわべを飾り立てられても、マンハッタンは二度と帰ることの出来ない家になってしまったではないか。

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