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年上女性&うぬぼれ怠け者くんの
最新式スクリューボール・コメディ

ジョー・レイドン
2008/08/22

●原題:What Happens in Vegas/2008年/アメリカ/98分/2008年8月16日(土)より日本公開
●配給:20世紀フォックス

 ラスヴェガスで起こったある出来事が、ニューヨークを舞台にした最新式のスクリューボール・コメディ(軽快なテンポの喜劇映画)につながっていく物語なのだが、結論としては、気楽に見ることができて、面白く、ターゲットとなる25歳以下の観客層の心にしっかりと刺さる作品となっている。予想に反して商業的にも成功するであろうし、ターゲットよりも年上の観客層も、相当数が受け入れてくれるかもしれない。米国では、夏興行の序盤戦を飾った『アイアンマン』や『スピード・レーサー』のキラキラ、ピカピカに対抗する番組として、配給元の米フォックスも、この作品をうまく位置づけていた。アシュトン・カッチャーキャメロン・ディアスという当代きっての人気者の2人を主人公に据えたスター映画でありながら、ありきたりとも思える脚本から充分な笑いをしぼり出し、まったく性格の異なる2人が言い争いをしたり、陰にまわって足を引っ張り合ったりしながらも、ハッピー・エンディングに向かっていく様子をしっかりと描き出している。

30~40年代の“スクリューボール・コメディ”がルーツ

 流行に敏感で口やかましい人々は、本作を、ジャド・アパトウが製作する映画を軽くしたようなものと言わずにはいられないだろう。というのも、この作品が自分より精神的にずっと大人の女性と付き合うことで、自分のことしか考えていない自己陶酔的な怠け者くんが、自分の人生の行く先に気がついてみたり、より責任感が強くなったりする物語だからである。が、実際のところは、こういった設定は、アパトーが有名になる、ずっと前から存在している。

 事実、この最新作のルーツはと言うと、1930年代、40年代のスクリューボール・コメディにまでさかのぼることができる。そういった軽快なテンポの古典的なコメディとの大きな違い(まぁ、いくつかある大きな違いのうちのひとつと言ったほうがよいかもしれないが)は、本作が前半のやりすぎと言えるほどの大騒ぎを抑え気味にすることで、より楽しめるものになっているところである。

まったく異なる2人のニューヨーカーの衝動的な判断

 デイナ・フォックスの脚本は、ラスヴェガスに休暇にやってきた2人の、まったく似ていないニューヨーカーが下す衝動的な判断を中心に展開していく。遊んでいるばかりでうだつの上がらないジャック・フラー(カッチャー)は、このラスヴェガスへの旅を、父(トリート・ウィリアムズ)が経営する家具メーカーをクビになったことへのご褒美だということにしている。成功をあせる商品先物取引仲買人ジョイ・マクナリー(ディアス)は、へこんで傷ついた自尊心を慰めるために歓楽都市ラスヴェガスへと飛んできていた。彼女はフィアンセ(ジェイソン・サダイキス)のサプライズ誕生パーティーで、友人たちの見ている前で、別れを告げられていたのだ。

 2人は、それぞれ自分の親友と呼べる人間と行動をともにしている。ジャックには、二流の弁護士(ロブ・コードリー)、そしてジョイには、おしゃべりの皮肉屋(レイク・ベル)といった具合。しかし、それでも、2人の酔いに任せた大騒ぎは終わりを見ることはなく、長い夜の果てに、うっかりと夜でも開いているラスヴェガス式のウェディング・チャペルへと足を踏み入れ、結婚してしまう。そして、翌日の朝がやってくる。後悔しきりの2人は、自分の町に帰ったら、すぐにでも婚姻取り消しの申し入れを裁判所にすることを心に決める。しかし、そんな時、ジョイの25セント玉を借りてスロット・マシンで遊んだジャックは、なんと300万ドルのジャックポットを引き当ててしまう。

超キレイ好きな年上女性と、だらしない怠け者くん

 舞台はニューヨークに戻り、結婚生活という神聖な行いに保守的な考えを持つことで知られる辛らつな裁判官(デニス・ミラー)は、300万ドルのジャックポットに関する言い争いに簡単に判決を下すことを拒み、「6カ月間の厳しい結婚生活」、そしてそこから先に抜け出したいと言いだした方がお金を受け取る権利を失うという、協力しなければやっていけない判決を、彼らに突きつける。

 そんなわけで、超キレイ好きなジョイは、ジャックのだらしないアパートに移り住まなければならなくなる。そして、怠け者のジャックは、トイレの便座をいちいち下げろとか、汚れた洋服をそこらじゅうに置くななど、聞き入れ難い要求を突きつけてくる女性との暮らしを、楽しんでいるように振る舞わなければならなくなる。

ぴったりの役柄でなじみのある動きを見せるカッチャー&ディアス

 ごく自然なことだが、その同棲生活を終わらせるため、そしてもっと大事なお金を自分のものにすることを願って、2人は互いに相手をやり込めようとする。そして、ごく自然に、ゆっくりとではあるが、ジョイがジャックの家族に気に入られたり、ジャックがジョイのボス(デニス・ファリーナ)に取り入ろうとしたり、2人の仲は緊密になっていき、しだいに好意が芽生えはじめる。

 物語は、ちょっとした予想もしないような展開を見せるだけで、大きな驚きのあるものではない。しかし、カッチャーにしてもディアスにしても、それぞれにぴったりの役柄をもらい、なじみのある動きを見せ、とても魅力的に演じていることは否定できない。そして脇役陣(コードリーや、ベル、ファリーナ、そして結婚カウンセラーを演じるクイーン・ラティファ)も愉快な抜け目なさで、映っている時間は短いが、しっかりとその場をさらっていく活躍を見せている。イギリス生まれの監督ヴォーン(“Starter for 10”)も、映画の前半は肩に力が入ってしまったのか、やりたい放題の滑稽さを強調しようとしてギクシャクしているところもあるが、まぁ歴史に残ることはないだろうけれど、軽い娯楽作品としては良くできている作品を、破綻させないだけの滑らかなノリの中に納めている。

 技術的な価値は、特別、何か言及するほどのことはなにもない。ラスヴェガスを映し出したシーンは特に、観客がギャンブルのメッカ、ラスヴェガスの幕あいから期待するような活気や派手さの点で、完全に欠けてしまっている。

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