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建築家・藤本壮介
人に優しくない洞窟的建築物が
人間の生活に形を与え豊かにする

2008/10/06
藤本壮介。現在、若手建築家の中で注目されている一人だ。2000年に藤本壮介建築設計事務所を設立し、青森県立美術館設計競技優秀賞(2000年)やJIA日本建築大賞(08年)などこれまで数多くの賞に輝いている。今後の建築界を背負うであろう彼が思い描く理想の建築とは何か。代表作“HouseO”の設計秘話や、映画やアートとの関係性、そして建築家の在り方に至るまで、赤裸々に語ってもらった。

生活空間を引き立てるフレームとしての建築

——私の中で建築とは、まず箱ありき。何が入るかは後回しで、同じような流行の意匠が優先されているというイメージなんです。おそらく建売住宅などのイメージが強いのかもしれません。ところが藤本さんの作品、特に海を見渡す“HouseO”を見て、この考えはくつがえされました。外と中との連絡感、空気感の広がりに、人とその土地との“共生”を強く意識させられたからでしょうね。特にこの作品の場合、発想の基となったのは一体どのようなものだったんでしょうか。

藤本壮介(以下、藤本) 僕の場合、住むというのは、その場所を楽しむことと同じ意味なんですよ。HouseOでは、海を見下ろす敷地が素晴らしかった。だから、ここでは海とどう関わるかってことですよね。もちろん、海はそこにあるから何もしなくても関われるけれども、建築らしきものができたときに、海との関わりがより豊かになっていけば成功なんじゃないかと。そこで、最初はとにかく海がよく見えるようにパノラマで考えていたんです。でも、視界がただ開けていればいいというわけではなかったんですね。海は見る方向で全然色が違うんですよ。パノラマで見ていると違いが分からないんですが、切り取ってあげると、ある一方では真っ青な海であったり、もう一方ではグリーンがかっている海であったりするんです。視界をちょっと狭めてあげることで、いろいろな海が体験でき、海のそばにいることが楽しめる場所になるのではと思いました。

海を見下ろす崖の上に立つ“House O”外観
Photographs by Daici Ano
海を見下ろす崖の上に立つ“House O”外観
Photographs by Daici Ano

——家の中から見た風景を一つの絵と考え、装飾品ととらえる“借景”という考え方に近いですね。

藤本 HouseOではリビングにいると、ダイニング、キッチンと重なって見えるんですね。そうすると、単に外の風景だけではなく、外の風景とキッチンとダイニングとの重なりが借景みたいな感じで、重なって見えるんです。そういう面白さはあると思いますね。

——建築物を設計する際には、住む人の生活を考え、こういうふうに住んでほしい、あんなものを置いてほしいなどと想像されると思います。ですが、いったん建築家の手を離れるとどうにもできないですよね。HouseOを設計されたときにはどのような生活空間を想像されていましたか?

藤本 お施主さんのセンスがよかったので、あの家の場合は全く心配していませんでした。それに、僕自身が実はこういうふうに使ってほしいとか、こんな感じのライフスタイルが似合うとかっていうように、あまり狭めたくないんですよ。むしろ生活する人が適当にものを置いたり、生活にまつわるものがごろごろ出てくる状態っていうほうが僕は好きなんです。ただそのときに、散らかればいいということではなく、借景みたいに重なってくるのがいい。物が出てくれば出てくるだけ、その物たちがうまく関係していって、風景として豊かな美しさが出てくるような建築の作り方があるんじゃないかと思っています。

——許容量が大きいですね(笑)。

藤本 そうありたいですね。例えが良くないかもしれないですけれど、額縁ってあるじゃないですか。もし中に汚い絵や、へたくそな絵が来ても、それなりにある美しさを作り出してくれるような。もちろん、素晴らしい絵が来たらもっと素晴らしくしてくれるような額縁です。つまり、それ自体が主張するというよりは、中に来るものとうまくコラボレーションして引き立ててくれる。そういう建築っていうものがあるんじゃないかなと。

——お伺いしていると、藤本さんの建築とは、絵そのものではなく、許容量の大きいしっかりとしたフレームが、空間全体を生かすという発想だと感じました。

藤本 そうですね。ただ、フレームがしっかりしているというよりは、意識されないくらいのほうがいいんですよ。意識されていないんだけど、実はきれいに作られてるとか。

海に面した壁はガラス張りになっており絶景が楽しめる
Photographs by Daici Ano
海に面した壁はガラス張りになっており絶景が楽しめる
Photographs by Daici Ano

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