日本映画界を支える、美術監督の林田裕至。『TOKYO!』で、ミシェル・ゴンドリーとタッグを組み、創り上げたTOKYOには、どんな思いが込められていたのだろうか!?
いきなり核心部分を話してくれた、ゴンドリー監督

上のデザインから生まれた、アケミの部屋
林田裕至さんの“ゴンドリー作品”との出会いというと?
「PVです。彼の名を意識せぬまま触れていたものがけっこうあって、DVDにまとめられた作品集『Directors Label』を数年前に観て、“あれもそうだったのか!”と感嘆しました。チボマットの『Sugar Water』なんて素晴らしいですよね。今回の映画のオファーがあったときはビックリしました」
その映画『TOKYO! <インテリア・デザイン>』、ミシェル・ゴンドリー監督との打ち合わせはどのようにされていったんですか。
「ゴンドリー監督が来日し、お会いしてみたら、いきなり映画の、それも美術的な核心部分を話してくれたんです。まだ正式に、僕が担当とは決まっていなかった時点で。とても熱心に丁寧に、1時間ほど説明してくださり、会う前から参加したかった仕事でしたが、ぜひ関わりたいと思いましたね」
ゴンドリー監督が話された核心部分とは?
「ひとつは映画の終盤に出てくる“椅子”ですね。その場でどんどんデザインを描いてくれました。それから主人公たちが滞在する部屋はセットで作りたい、そして真上から俯瞰撮影が可能なようにしてほしいと。あと、部屋は3階の設定で下の街との距離感が大切なので、街のミニチュアを天井に作って鏡で映して撮れないか、といったアイディアもありました」
「PVです。彼の名を意識せぬまま触れていたものがけっこうあって、DVDにまとめられた作品集『Directors Label』を数年前に観て、“あれもそうだったのか!”と感嘆しました。チボマットの『Sugar Water』なんて素晴らしいですよね。今回の映画のオファーがあったときはビックリしました」
その映画『TOKYO! <インテリア・デザイン>』、ミシェル・ゴンドリー監督との打ち合わせはどのようにされていったんですか。
「ゴンドリー監督が来日し、お会いしてみたら、いきなり映画の、それも美術的な核心部分を話してくれたんです。まだ正式に、僕が担当とは決まっていなかった時点で。とても熱心に丁寧に、1時間ほど説明してくださり、会う前から参加したかった仕事でしたが、ぜひ関わりたいと思いましたね」
ゴンドリー監督が話された核心部分とは?
「ひとつは映画の終盤に出てくる“椅子”ですね。その場でどんどんデザインを描いてくれました。それから主人公たちが滞在する部屋はセットで作りたい、そして真上から俯瞰撮影が可能なようにしてほしいと。あと、部屋は3階の設定で下の街との距離感が大切なので、街のミニチュアを天井に作って鏡で映して撮れないか、といったアイディアもありました」
SF的な冒頭シーンは、大人数で一気に作り上げた

スタジアムに作られた、渋滞シーン
オープニング、主人公の藤谷文子さんと加瀬亮さんが嵐の中、車で上京してくるわけですが、あれ、ロケセットだそうで!
「ちょっとSF的なお遊びというか趣向で、酸性雨で人や標識が溶けている……と、細かく台本には書かれていました。どうやればいいんだろうと、台本を読んで悩みましたね。首都高から渋谷あたりに降りた道路を想定して書かれていたんですが、雨降らししつつ渋滞を作るなんて不可能なので、ロケ場所探しに苦労しました。結局、味の素スタジアムで撮ったんですけど、あそこには広大な駐車場があって、そこに車をたくさん並べて渋滞シーンを作ろうと算段しました。ところが下見に行ったとき、ゴンドリー監督が“街の光景が何もないじゃないか、ここじゃ撮れない”って車から降りてこなくなっちゃって(笑)。当初は“何もなくてもよい”という話だったんですが。そこで駄目もとで、スタジアムの外側の通路を見せたら、監督は気に入ってくれて“ここを道路に見立てて作れるか”って。夜のシーンですし、しかもスタジアムはそんなに長く借りられないものですから、撮影当日、朝から一気に人数を注ぎ込んで、あの場面は作りました」
「ちょっとSF的なお遊びというか趣向で、酸性雨で人や標識が溶けている……と、細かく台本には書かれていました。どうやればいいんだろうと、台本を読んで悩みましたね。首都高から渋谷あたりに降りた道路を想定して書かれていたんですが、雨降らししつつ渋滞を作るなんて不可能なので、ロケ場所探しに苦労しました。結局、味の素スタジアムで撮ったんですけど、あそこには広大な駐車場があって、そこに車をたくさん並べて渋滞シーンを作ろうと算段しました。ところが下見に行ったとき、ゴンドリー監督が“街の光景が何もないじゃないか、ここじゃ撮れない”って車から降りてこなくなっちゃって(笑)。当初は“何もなくてもよい”という話だったんですが。そこで駄目もとで、スタジアムの外側の通路を見せたら、監督は気に入ってくれて“ここを道路に見立てて作れるか”って。夜のシーンですし、しかもスタジアムはそんなに長く借りられないものですから、撮影当日、朝から一気に人数を注ぎ込んで、あの場面は作りました」
東京的なイメージより、さりげない路地裏が好きだった

アケミの部屋のバスルーム
もともと原作コミックでは、NYという設定でしたよね。
「ええ。ガブリエル・ベルさんが描かれたものです。それを東京に移し替えたらどうなるのかという、その捉え方が僕は面白かったですね。ゴンドリー監督は、いわゆる東京的なイメージには興味を持っていなかった。裏場、といってもビジュアル的に強い場所ではなく、さりげない路地裏がお好きで、よく写真を撮られていました。特に最後に登場する日本橋の何でもない雑居ビルの裏、ゴミ捨て場のところなんですけど、あそこはこの作品にとって象徴的で、それぞれの場所選択にゴンドリー監督の考え方が表れている気がしましたね」
主人公たちが滞在する部屋は、おそらく原作のNYのそれよりも“狭さ”が強調されているのではないですか。
「そうですね。あの部屋は、6畳一間よりちょっと狭くしています。カメラ位置のために一応、壁を外せるように細工しましたが、ゴンドリー監督はそれを嫌い、狭い中でやりくりしていました。監督からリクエストがあったのは、誇張をせず、特殊な部屋にするなということ。ポップでカラフルな世界も得意ですが、今回はそれとは違う、リアリティをベースに作っていくコンセプトだったみたいですね。とにかくこだわられていたのが、部屋の電化製品全て、実際に使えるようにしておいてほしい、と。裏で芝居に合わせてタイミングを計って動かすのはダメで、それは一瞬のズレが出るからイヤなんだそうです。配線してどれも、本当にスイッチが入るようにしました。さすがに水道ばかりはそうはいかなくて、撮影時は裏で水を流しましたが(笑)。こだわりは強いですが、必要な要件は全部伝えてくださって、それがクリアできていれば、他のことに関しては細かく言われない現場でしたね」
“狭さ”といえば、劇中には故・黒川記章さんが設計された中銀カプセルタワービルの中の部屋も登場していましたね。(「中銀カプセルタワービルは、新橋に!>>)
「ゴンドリー監督が“あれは何だ、あの中に人は住んでるのか”と関心を持たれたので。先ほども言いましたが、東京の部屋の狭さをどう見せるかが重要で、最低でも3ヶ所は見せたいと。でも普通のアパートやマンションが続くと絵的に変化がつかない。そこで、現在の日本からするとずいぶん過去のものですが登場させました。海外にはないものですしね」
「ええ。ガブリエル・ベルさんが描かれたものです。それを東京に移し替えたらどうなるのかという、その捉え方が僕は面白かったですね。ゴンドリー監督は、いわゆる東京的なイメージには興味を持っていなかった。裏場、といってもビジュアル的に強い場所ではなく、さりげない路地裏がお好きで、よく写真を撮られていました。特に最後に登場する日本橋の何でもない雑居ビルの裏、ゴミ捨て場のところなんですけど、あそこはこの作品にとって象徴的で、それぞれの場所選択にゴンドリー監督の考え方が表れている気がしましたね」
主人公たちが滞在する部屋は、おそらく原作のNYのそれよりも“狭さ”が強調されているのではないですか。
「そうですね。あの部屋は、6畳一間よりちょっと狭くしています。カメラ位置のために一応、壁を外せるように細工しましたが、ゴンドリー監督はそれを嫌い、狭い中でやりくりしていました。監督からリクエストがあったのは、誇張をせず、特殊な部屋にするなということ。ポップでカラフルな世界も得意ですが、今回はそれとは違う、リアリティをベースに作っていくコンセプトだったみたいですね。とにかくこだわられていたのが、部屋の電化製品全て、実際に使えるようにしておいてほしい、と。裏で芝居に合わせてタイミングを計って動かすのはダメで、それは一瞬のズレが出るからイヤなんだそうです。配線してどれも、本当にスイッチが入るようにしました。さすがに水道ばかりはそうはいかなくて、撮影時は裏で水を流しましたが(笑)。こだわりは強いですが、必要な要件は全部伝えてくださって、それがクリアできていれば、他のことに関しては細かく言われない現場でしたね」
“狭さ”といえば、劇中には故・黒川記章さんが設計された中銀カプセルタワービルの中の部屋も登場していましたね。(「中銀カプセルタワービルは、新橋に!>>)
「ゴンドリー監督が“あれは何だ、あの中に人は住んでるのか”と関心を持たれたので。先ほども言いましたが、東京の部屋の狭さをどう見せるかが重要で、最低でも3ヶ所は見せたいと。でも普通のアパートやマンションが続くと絵的に変化がつかない。そこで、現在の日本からするとずいぶん過去のものですが登場させました。海外にはないものですしね」
自分のアイデアを効果的に見せるため、過去の映画を引き合いに

(c)2008『TOKYO!』
先日、トラン・アン・ユン監督による『ノルウェイの森』(2010年公開予定→「ノルウェイの森」映画化ニュース>>)の映画化が発表されましたが、今後も、海外の監督が日本で撮影する可能性は増えていきそうですね。
「とてもいいことだと思います。僕もゴンドリー監督と御一緒し、今まで組んだ日本の監督たちとは全然違う考え方を経験できましたから。例えば彼は何にもとらわれてないというのか、例えば美術の説明でも、過去の映画を引きあいに出しても根本はそれに縛られて発想しているのではなく、純粋に自分のアイディアを効果的に見せるためにそうするんですね。当然、日本の監督陣にも頑張ってもらいたいですよ。海外組に企画を持っていかれないように! 僕らスタッフ側の責任も重大です。若い新たな才能を育てることもスタッフの仕事のひとつだと思うので、出来るだけ僕も、自分よりも若い監督と機会があればタッグを組みたいなと考えています」
最後になりましたが、林田さんが映画美術を手がけるようになったキッカケとは?
「大学1年のときに、石井聰亙監督の『爆裂都市Burst City』に、アルバイト募集というか、半ば強引に連れて行かれて、それ以来、この仕事をやってる感じなんですけど(笑)。連日徹夜の大変な現場だったんですが、(監督の)阪本順治さんが美術助手にいらして、とても頼りになり、優しくしてもらったのが印象に残っていますねえ」
「とてもいいことだと思います。僕もゴンドリー監督と御一緒し、今まで組んだ日本の監督たちとは全然違う考え方を経験できましたから。例えば彼は何にもとらわれてないというのか、例えば美術の説明でも、過去の映画を引きあいに出しても根本はそれに縛られて発想しているのではなく、純粋に自分のアイディアを効果的に見せるためにそうするんですね。当然、日本の監督陣にも頑張ってもらいたいですよ。海外組に企画を持っていかれないように! 僕らスタッフ側の責任も重大です。若い新たな才能を育てることもスタッフの仕事のひとつだと思うので、出来るだけ僕も、自分よりも若い監督と機会があればタッグを組みたいなと考えています」
最後になりましたが、林田さんが映画美術を手がけるようになったキッカケとは?
「大学1年のときに、石井聰亙監督の『爆裂都市Burst City』に、アルバイト募集というか、半ば強引に連れて行かれて、それ以来、この仕事をやってる感じなんですけど(笑)。連日徹夜の大変な現場だったんですが、(監督の)阪本順治さんが美術助手にいらして、とても頼りになり、優しくしてもらったのが印象に残っていますねえ」
林田裕至
1961年兵庫県出身。86年『処女のはらわた』で美術を務めて以降、数多くの作品で活躍。主な映画作品に『ロビンソンの庭』 、『あずみ』(03年/北村龍平監督)、『CASSHERN』、『阿修羅城の瞳』、『神童』、『クローズZERO』などがある。宇多田ヒカル「FINAL DISTANCE」などのPVでもその才能を発揮している。現在、紀里谷和明監督『GOEMON』 、三池崇史監督『ヤッターマン』が待機中
『TOKYO!』
● 2008年/仏=日=韓=独/110分/35ミリ/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/8月16日から、シネマライズ、シネ・リーブル池袋ほか順次日本公開
● 配給:ビターズ・エンド
→公式HPhttp://tokyo-movie.jp/
text by Yukio Todoroki
1961年兵庫県出身。86年『処女のはらわた』で美術を務めて以降、数多くの作品で活躍。主な映画作品に『ロビンソンの庭』 、『あずみ』(03年/北村龍平監督)、『CASSHERN』、『阿修羅城の瞳』、『神童』、『クローズZERO』などがある。宇多田ヒカル「FINAL DISTANCE」などのPVでもその才能を発揮している。現在、紀里谷和明監督『GOEMON』 、三池崇史監督『ヤッターマン』が待機中
『TOKYO!』
● 2008年/仏=日=韓=独/110分/35ミリ/カラー/ビスタ/ドルビーデジタル/8月16日から、シネマライズ、シネ・リーブル池袋ほか順次日本公開
● 配給:ビターズ・エンド
→公式HPhttp://tokyo-movie.jp/
text by Yukio Todoroki
















































